第2章
再会と決別
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「って、こりゃ…」
言ったきり、寛也は開いた口が塞がらなかった。
今、寛也の目の前にあるのは、巨大なマンションだった。何階建てだろうか、見上げてもよく分からなかった。
先に両親と飛行機で上京した杳とは別行動で、寛也はこっそり竜体でここまでやってきた。そして、教えられた地下鉄の駅の出口から差ほど歩かない所にあったマンションが、今日から寛也の家となる所だった。
が、思った以上に巨大で、尚且つ、高級そうだった。
マンションの前庭は広く、木々が数多く植えられている。春先だと言うのに、花壇には幾種類もの花が咲き、住む人の目を楽しませていた。
その前庭を抜けてたどり着く玄関扉は自動で、次の扉は暗証番号とキーがなければ開かれない、セキュリティの厳重な造りになっていた。
寛也はエントランスホールに入って、おっかなびっくりでしりごみしてしまいそうだった。
キーは勿論預かっていて、暗証番号も聞いていたのだが、それを試してみることなく、即、杳に電話をかけた。
慣れない手つきで携帯電話の小さなダイヤルキーを押す。長距離電話よりも家族割の方がお得だと言って潤也が買ってくれたものだった。
『遅いよ、ヒロ』
コール3回で電話に出た杳は、寛也の声も確かめずに不機嫌な口調を寄越してきた。
『何やってるのさ? 今どこ?』
「悪ィ。今、下にいるんだけど」
『だったら早く上がってきて』
「それが…」
『まさか鍵をなくしたって言うんじゃないだろうな?』
「いや、そうじゃなくて…」
『あーもうっ、面倒くさいっ』
言われた途端、入り口のドアが開かれた。誰もいないのに。寛也も何もしていないのに。
『早く入ってきて。ったく、アナログ人間なんだから』
言うだけ言って、杳は電話を切った。
何が起こったのか分からず、呆然とする寛也の目の前で、すぐに扉が閉じられそうになる。寛也は慌てて、その中へ転がり込んだ。
「あっぶねー」
こんなことで、ここに住めるのかどうか不安だった。杳は慣れたような感じなので、弱みを見せたくない寛也としては、ここは頑張るしかないと思うものの、扉を入った先に広がるラウンジと中庭に目眩がしそうだった。
ここはおとぎの国かと勘違いしながら、ようやくエレベーターに向かった。
* * *