第1章
巣立つ雛
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かなりの時間をかけて根元まで埋め込んで、寛也は大きく息をついた。
「杳…杳…」
ギュッと目を瞑ったままの杳の頬をそっとたたく。痛みの為か、涙に滲む瞳が上げられ、切なげに揺れた。その目元にそっと口付ける。
「お前ん中、すっげー、気持ちイイ…お前は?」
プイッと逸らされた瞳。
「気持ちいい訳ないだろ…こんな……あっ…」
しかし、強気の口調はすぐに甘い吐息に変わった。
寛也が少し動いただけで、杳はハッとするような声を上げる。
「やだ、ヒロ…動いたら……ああ…っ」
寛也は少し抜き差ししながら、先程の場所を擦り上げる。その度に甘い声を上げる杳。
「ヒロ…ああ……んは…あ…ん」
無意識に、うっとりしたような目で見上げてくる杳に、ゾクゾクした。
愛しくて、愛しくてたまらない存在。
ずっと大切にしてきて、ようやく思いが叶って、もっと大切に扱いたいのに――。
「悪ぃ、杳…俺……優しくなんかできねぇみたいだ…」
熱い吐息。
絡まってくる杳の細い腕。
見つめてくる瞳。
華奢な肢体。
何もかもが愛しくて。
「杳…杳…愛してる…」
寛也はそう囁きながら、腰を動かす。杳の中も熱く熱を持ち、寛也のものをきつく締め付けてくる。
「…んあ……あ…ヒ…ロ…ああ…」
一度達して萎えてしまっていた杳のものが再び固くなっていって、寛也の下腹部に当たる。それを指に絡めて尚も揉みしだく。
前からと後ろからとの両方から攻められて、杳があっと言う間に昇り詰めていくのが分かった。寛也ももう、限界だった。
少し力を入れて杳のものを握り締めると、寛也もきつく締め付けられた。
達する寸前、寛也は己のものを抜き出した。シーツを汚すと怒られそうだったので、殴られるのを覚悟の上で杳の下腹部に吐き出した。
今まで感じたことがない程に、満ち足りた気持ちが胸に広がっていく。
寛也の腕の中でぐったりしている杳は、浅く早い呼吸を繰り返していた。その手を取って、指を絡ませる。
潤んだ瞳が見上げてくるのを、軽く口づけて、囁く。
「愛してる…杳…」
多分、こうするものなのだと思った。
肉体と同じように欲情する精神。それはいつもの「竜の力」とはほんの少しだけ違っていて、その自然に紡ぎ出されるものを静かに送り込む。
絡めた指先から。
触れ合う肌と肌から。
甘く口付けた吐息から。
抱き締めた杳の全て――身も心も、その魂までもがひとつになるような感覚がした。
そんな寛也に全てを委ねるように、杳はそっと瞼を閉じた。
* * *