第1章
巣立つ雛
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 その寛也の顔に、正面から平手を押し付ける杳。

「もういい。やめるっ。ヒロ、自分で処理して」

 言って杳は寛也の下から逃れようとする。が、寛也はそれを許さなかった。杳の身体をベッドの上に押さえ付けて。

「やだね。お前から言い出したんだぜ。忘れたのか?」
「忘れた」

 きっぱり言ってそっぽを向く杳。そんな仕草も何もかもが愛おしく思える。

 その頬に口付けて軽く髪の毛を掻き上げてやると、杳は寛也に視線を向けてきた。

 そこには不安の色を浮かべていて、少し脅えているようでもあった。

 言うことと、思っていることとは裏腹なこの愛しい人に、寛也はゆっくり唇を重ねてから、低く言う。

「そんなこと言うなよ、杳。優しくしてやるから」
「偉そうに…」

 本当に、この口を何とかしてやりたいと思った時、ポツリと小さく声が聞こえた。

「…ん、もう…仕方ないな…」

 それは了承の意だった。

 寛也はもう一度杳に優しい口づけを落としてから、急いで体勢を変えた。いつ杳の気が変わるとも知れない上に、真剣に、寛也は限界だった。それでも、乱暴にだけはしたくなかった。

 先走りを始めた自分のものを諌(いさ)めつつ、指を使って丁寧の杳の身体を慣らしていく。

 二本目の指を入れた時、杳が身体を震わせた。

「どうした?」

 顔を覗き込むと、杳は慌てたように顔を背ける。

「何でもないっ」

 横顔がひどく艶めいていて、寛也は小さく笑みをこぼしてから、今度はカリッと、内壁を指先で軽く引っ掻くように擦ってた。途端。

「ああ…っ」

 甘い声が上がるのを、慌てて口を塞ぐ杳。そんな様子が可愛くて、寛也は同じ場所をカリカリと擦った。

「ああ、んっ……や…やだ…ぁ…」

 白い胸を僅かにのけ反らせて、その感覚に耐えようとするが、上がる声は止められない様子だった。

 寛也はもう一度勃ち上がり始めた杳自身を、開いている方の手でやんわりと扱きながら、もう一本指を増やした。

 自分の中で蠢く寛也の指に、気持ちが良いのか悪いのか、杳は身をよじる。

「ヒロ…まって……ぁあ…」

 上半身をくねらせる杳は、ひどく艶めかしくて、寛也の欲情をそそる。もう限界ギリギリで、寛也は指を抜いて杳を抱き寄せた。

 指が抜かれてホッとしてる杳を優しく抱き締めて、寛也はゆっくりと猛ったものを杳の中へ沈ませようとした。

「ヒロ…やだ…ヒロ…ッ」

 まだ十分に慣らされているとは言えない杳は、寛也のものを受け入れるには不十分で、杳はその痛みに寛也の腕の中で身を強ばらせた。

 寛也はその背を片手で抱き締めて、もう一方の手を下に伸ばし、杳の中心に指を絡ませる。

「…あ…」

 ゆっくりゆっくり揉みしだきながら、寛也は杳の中へ身を深く沈ませていった。


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