第7章
過去、そして未来
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「おなかすいたんだけど?」
つい先ほどまで部屋の外でいちゃついていた二人――特に、年長者の方――が、不機嫌そうに部屋に転がり込んできた。
「何これっ。お皿、半分に減ってるじゃないっ。あーもうっ、母さんの料理まで食べ散らかしてっ」
杳は不機嫌な顔のまま寛也を睨む。リモコンで遊んでいた寛也が、ちゃっかり座を取っているのが、先ほどまで自分が座っていた場所で、そこを取られたと言う不満も重なっていく。
「分かってる? まだクリスマス会、始めてないんだよ。って言うか、オレ、昨日の朝からほとんど何も食べてなくても我慢してるのに、どうしてヒロだけこんなに食べてんのさっ!?」
「そこに食いもんがあるから」
「このバカーッ!」
言い様に、杳は寛也の脳天を平手打ちした。
「ってぇなっ。何すんだよっ?」
怒鳴る寛也に、プイッとそっぽを向いて、それでも杳は寛也の隣へ座り込む。そのうえで、卓上の皿は全部寛也から遠ざけて、その代わりに翔の席の前に並べた。
「じゃ、乾杯して食べよ」
ふて腐れる寛也を無視して、グラスを持ったまま、誰かが飲み物を注いでくれるのを待つ杳は、ひどく嬉しそうに見えた。ずっと背負っていたものが降ろせたような、そんな風に見えた。
その横でテレビを見ているフリをしながらも、隣の杳が気になって仕方がない様子の寛也。
そんな二人が潤也には微笑ましく思えた。
あれからどれくらいの時が流れたものか。
何千年の時を経て、また再び巡り合えた二人は、多分、あの頃とは違う道を歩むことだろう。
どんな運命が待っていたとしても、きっと乗り越えていけるのではないだろうか。
潤也は来るべき戦いを予感しながらも、その中に希望を見いだせるような、そんな予感がした。
竜神伝 第二部
- 完 -