第7章
過去、そして未来
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「あのさ、ジュン…」
「ん?」

 言いにくそうにする寛也の言葉を、潤也は腰を落ち着けて辛抱強く待つ。言いたくなければ無理に聞き出すつもりはない。ただ、寛也が本心では言いたそうだったので。

「お前、杳が…杳が綺羅の生まれ変わりだって、知ってたか?」

 寛也の言葉に一瞬だけ息を呑む潤也を、寛也がじっと見やってくる。嘘をつける筈も、そのつもりもなかった。

「知ってたよ」

 その返答に、寛也は大きく目を見開いてから、視線を逸らした。

「じゃ、本当なんだ…」
「翔くんが言ったの?」

 考えられるとしたら、そのルートくらいだった。多分、杳は自分で気づいていたとしても何も言わないような気がした。他に知り得る者も考えられなかった。

「ああ」

 うなずく寛也に、眉をしかめる潤也。

 このことは寛也には敢えて教えていなかったのだ。言ってしまって、寛也が萎縮してしまう事を恐れていた。

 それは、寛也のことよりも何よりも、杳自身が今の寛也を思っていることを知っていたから。そうでもなければ、とっくにバラしている所だった。

「それで?」

 低く、短く聞く。と、寛也は黙ったまま俯く。

「杳が綺羅だったら、ヒロは昔のようにあっさりと身を引くんだ?」

 呆れたように言うと、あわてて顔を上げてくる。そのつもりは全くないのだろうと一目で分かるのに、返ってきた言葉は頼りなげだった。

「俺には、杳に近づく資格なんて、ねぇんだ…」

 余りにもらしくない言葉に、本気で呆れてしまう。この馬鹿は今まで一体何を見て来たと言うのか。杳の瞳が誰に向いているのか、知らない訳でもないだろう。それを今更になって。

 説教でも必要かと思ったが、敢えて別の言葉を選んだ。

「杳がそう言ったんだとしたら仕方ないけど、そうじゃないんなら、少し頭を冷やして考え直した方がいいよ」

 これでも随分と温厚になったと思う。本当に、現世でまで兄弟だなんて、情が移り過ぎてやりにくいと、自分でも思ってしまった。

 まだしかめっ面のままの寛也を置いて、潤也は腰を上げた。言って駄目なら、せめて腹一杯食べればまともに考えるようになるだろうと思った。


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