第7章
過去、そして未来
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終業式とともに、生徒会の今学期の行事も終了する。
学校祭は前生徒会が実行するので、その後に行われた選挙で当選した潤也の仕事は、今学期に限っては大してあるものではなかった。それでも細々とした雑用を終えて、役員全員が帰るのを見送って生徒会室の戸締まりをし、鍵を職員室へ戻した頃には、日もとっぷり暮れていた。
「陸上部、さすがにもう終わったかなぁ」
すっかり暮れてしまった寒空の下には、部員の姿は見えなかった。それを確認してから、潤也は帰路についた。
校門を出て、徒歩5分。走れば2分の距離にある家。
アパートの部屋には明かりはついてなくて、潤也は大きくため息をついた。
寛也はまたどこかで遊び回っているのだろうか。自分が遅い時くらい夕飯の支度くらいしてくれても罰は当たらないと思うのだが。
そんなことを考えながら、アパートの部屋に入り、ギョッとした。
そこに、気配をすっかりかき消した寛也が、床に座り込んでいたのだった。
「ヒロ…?」
声をかけると、潤也の存在に初めて気づいたように顔を上げた。
「どうしたの? 電気もつけないで」
言いながら部屋の明かりをつけると、寛也は眩しそうに目を細めた。一体いつからそうして座り込んでいたのか。
「夕飯、まだだよね?」
「あ…悪ィ」
俯き気味にそう言う寛也の様子に、明かに元気のないことを知る。いつもならこんなこと、冗談で返してくるのに。
「何かあったの?」
潤也はそのまま寛也の正面に座り込んだ。
元来が楽天的で余り深く物事を考え込むタイプではない寛也は、その前向きな明るさでこれまでどんなことでも乗り越えてきた。落ち込むことはあっても、食事をして腹がふくれると、無意識にも、前に進む道を選んでいた。だから心配することもないと思ったが、何となく今日は気になったのだった。
「部活、サボッたみたいだね」
運動の後はそのままトレーニングウエア姿で帰宅するので、制服のままの姿でいることから一目瞭然だった。元々サボリの常習犯だったが、最近では珍しかった。
そんな潤也の問いかけに、寛也は言おうかどうしようか迷っている様子が、見ていて手に取るように分かった。