第7章
過去、そして未来
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「同じ力を持った人、身近にいるよね?」

 問いかける翔の言葉に、ハッとする。その寛也の答えを待たずに、翔は続ける。

「だから杳に近づく資格なんて、戦にはない。それだけが言いたかったんだ」
「ちょっと待て。まさか…」

 言いたいことを言って去ろうとする翔の腕を、慌てて捕まえた。その手を邪険に振り払う翔。

「杳のあの力を今まで何だと思ってた?」
「だって、あれは勾玉の…」

 理解の遅い――否、理解したくない様子の寛也に、翔は眉根を寄せてみせる。

「勾玉は綺羅のものだ。その勾玉を身に取り込むのは、綺羅以外に誰がいると思ってるんだ?」

 寛也の疑問にストレートに答えるでなく、疑問形で返してくるばかりの翔の返答。そこから導き出される寛也の答えは、ただひとつだけだった。

 その寛也の表情からそれを読み取って、翔は目の色を険しくする。

「そんな事も分からずに、易々と近づくな。それに、戦は一度綺羅を傷つけた。そんな奴が、どの面下げて告白だなんて…許される訳ないだろ」

 翔の言葉の槍が、寛也の胸に刺さる。

「だからもう二度と杳には近づかないように。生命の交感も、もう必要ない」

 打ちひしがれそうになって、翔の最後の言葉にハッとして顔を上げる。杳はそれがないと、長くは持たない。そんな寛也の表情を素早く読み取って、翔は低く返す。

「戦なんかに任せるくらいなら、僕が力ずくでするよ」
「ば…お前、何言って…」
「言っただろ。お前にだけは渡さないと。戦に奪われるくらいなら、いっそ…」

 翔の声でないような声は、かつての長兄を思い起こさせるものだった。

「僕は、何度生まれ変わっても、お前だけは許さない」

 そう言って睨む翔の背に見えた銀色の気の激しさに、ぞっと背筋を走るものを感じて、もう何も返せなかった。


   * * *



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