第7章
過去、そして未来
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「杳。おい、杳ってば」

 不機嫌なのか、黙ったまま階段を降りていく杳に追いつく。

「なあ、それ、全部持って帰るのか?」

 聞くと、ジロリと睨まれた。

「ヒロにはあげないから」

 1個くらいくれと言う前に、そう言われてしまった。読まれているのだろうか、自分の気持ちを。杳からのクリスマスプレゼントをどんな形でもいいからもらえたらうれしいのにと、そんな淡い期待を持つ寛也に、杳はそっけない。そしてそのまま階段を降りて駐輪場へ向かう。

「そんなに食ったら、腹こわすぞ」
「大丈夫だよ」
「大丈夫じゃねぇよ。なぁ、俺、少し食ってやろうか?」
「しつこいな」

 そう言いながら睨まれて、思いっきりビクつく自分は情けないかも知れない。仕方なく、とぼとぼと杳の後を付いて行く。

 初めから大して期待してはいなかったが、それでもなかなか良い感じの二人だと寛也は思っていた。なので、もしかしたらなどと甘いことも考えていたのだが。

 駐輪場のバイクまで来ると、杳は座席を上げて、持っていたものを無造作に突っ込んだ。ぞんざいなその扱いに、それくらいなら少しくれればいいのにと思っているところに、杳と目が合った。途端、プイッとそっぽを向かれる。

「ヒロだってもらったんだろ? 物欲しそうにしないでよ」
「え…」

 そんなふうに見えるのだろうか。潤也ではないのだから、そうそうプレゼントなんてもらったこともないし、先程も断ったばかりだった。

「もらってねぇよ」

 寛也の言葉に振り向く杳の顔は、疑い深そうだった。

「ウソだよ。だってK組にだって騒いでいる子、いたよ」
「それ、ジュンのことじゃねぇ?」

 その方がよっぽど有り得る。そう言う寛也をじっと見上げてから、杳は突然吹き出した。

「そっかー。もらってないの? 1個も?」
「何だよ。悪いか?」

 そんなに笑われることなのだろうか。プレゼント交換とかならまだ普通にあるかも知れないが、クリスマスに一方通行のプレゼントも少ないと思うのに。さすがに憮然とする寛也。それに気づいて、杳は何とか笑いを堪える。

「ねぇヒロ、明日あいてる?」

 また突然に言い出す。

「オレ、暇なんだけど、どこかに遊びに行かない?」
「え…」

 月初めに潤也達にデートを邪魔されてから、実は一度も二人っきりで出掛けたことがなかった。期末考査があったことも事実だが、その試験週間中でも学校帰りに何か食べに行こうとするだけで、どこから嗅ぎ付けてきたのか、翔が邪魔をしてきた。盗聴器でも仕掛けているのではないかと疑うくらいに、狙い定めたように。


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