第7章
過去、そして未来
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「俺…に?」

 念のために聞いてみる寛也に、3人はうんうんとうなずいて見せる。

 誕生日にしろ、何にしろ、女の子からプレゼントなんてもらったことがない。バレンタインデーのチョコですらもらったことがない自分である。思いっきり信じられなかった。

 からかわれているのかとも思いながら、恐る恐る聞く。

「ホントに俺? ジュンじゃなくて?」

 寛也と違って生徒会長も務める優等生の潤也。その校内での人気が杳に次ぐ程のものだと知ったのは、立候補演説の時に周囲から沸き上がった黄色い声援を聞いた時だった。そう言えば、バレンタインデーにはチョコを山ほどもらい、誕生日にはプレゼントを手渡され、クリスマスには可愛いキャンディなんてものももらっていたりしていた。その潤也でなくて、自分になのかと、もう一度念を押す。

「そう。受け取って」

 言って、少し不安そうな笑顔を浮かべている女子に、寛也は思わず手が出かけたものの、寸前で思い止どまった。

「やっぱ悪ィ。俺、受け取れねぇ」
「何で? せっかく作ったのに」
「そうよ、そうよ」
「受け取るくらいしてあげてもいいじゃない」

 真ん中の子を挟んで、左右の女子が加勢する。何でそんなに責められなければならないのか分からずに、寛也はそれでも拒否をした。

「ホントにごめん。俺、好きな奴、いるから」

 寛也がそう言うと、3人が3人とも揃って大きくため息をついた。

「それって葵くんのことでしょ? フラれたんじゃないの?」

 杳に告白してフラれた事は、校内にすっかり知れ渡っていた。

 誰か見ていた者でもいたと言うのだろうか、翌日には、寛也は友人の何人かから、ねぎらいの言葉と励ましの言葉をもらったものだった。

 これが世間一般に知られている杳との関係だった。その実は、実質的には恋人も同然だと寛也は思っていた。杳は寛也を好きだと言ってくれているのだ。杳の好きと寛也の好きは別物かも知れないが、それでも全然諦めてはいないし、実際、そんな雰囲気になることも多かったから。

「フラれても思い続けるのは自由だろ? あいつが特定の奴と付き合ってるなら諦めるが、そうじゃない以上は、まだ望みはあるし」

 そう、きっぱりと言う。

 泣きそうな顔をする彼女に背を向けて。

「ごめんな」

 それだけ言って、駆け出した。杳のクラスに向かって。


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