第7章
過去、そして未来
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「あの…結崎くん…」

 2学期最後のホームルームも終わって、教室を出ようとした所で、寛也は呼び止められた。

 振り返ると、クラスの女子が3人、立っていた。

「何か用か?」

 ぶっきら棒に返してしまう。急いでいるのにと思って。

 寛也の放課後は忙しい。杳を送っていって、その後、今年最後の部活が待っている。

 秋の大会で倒れて以来、寛也は真面目に部活動に勤(いそ)しんでいた。

 後に知ったことではあるが、あの時体調が悪かったのは、既に繭になっていたのではないかと言うことだった。人間と違って、精神体である竜の成長はやはり寛也自身の心の成長と関係しているのだろう。そう言えば、あの直前に生まれて初めて告白なんてものをしてしまったし、思いっきり失恋も味わった。ダメージを受けたとともに、精神的にも成長したのだろうと潤也が言っていた。

 そんなものかと思ったが、それでも次の大会にはきちんと成績を残したかった。だから、現在かなり真剣に部活に参加していたのだった。

「ええーっと…1日早いんだけど、明日から冬休みで渡せないからこれを…」

 言って、真ん中の子が両手を差し出した。その手には奇麗な模様にリボンまでついた袋があった。

「なに?」

 寛也はどう見てもプレゼントとしか思われないそれに、キョトンとする。

 そんな寛也に、彼女達はくすくす笑って。

「明日、イヴなの、知ってる?」

 クリスマス・イヴ。12月24日。そんなことは分かっている。

 5月に校舎が破壊されて――繰り返すようだが、寛也の所為である――、しばらく授業がなかった関係で、授業時間を埋める為に2週に1回程度の割合で土曜日や祝日が登校日になっていた。そんな煽りを受けての12月23日の祝日に2学期の終業式が行われる羽目になった。24日を休みにするための教師側の魂胆が見え見えだったが。

「それが…?」

 何で自分にプレゼントになるのか、寛也には皆目見当もつかなかった。

「結崎くんにクリスマスプレゼント。あまり上手くできなかったんだけど…」

 手にあるものに目を落とせば、ふんわり膨らんだ紙袋。中身は、マフラーか薄手のセーターか。言葉の意味から、手作りと思われるそれは、間違いなく寛也に差し出されたもので。


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