第5章
性徴
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 寛也は咄嗟に窓を開けた。そのまま窓から飛び出して行こうとする寛也。それを慌てて潤也と杳が止めた。

「ダメだよっ」
「まってー」

 潤也に腕を、杳にズボンのベルトを掴まれた。

「止めるな。人が襲われてんだぞっ」

 怒鳴って、ここが喫茶コーナーだと気づく。校庭の騒動に気づいて目を見張る生徒達もいるが、何事かと寛也達を見ている生徒達もいた。が、そんなことを気にしている場合ではないと、寛也は二人の手を振りほどいて、窓の桟に足をかけて、身を乗り出した。

「ばかヒロッ、ここ、三階なんだよっ」

 杳の声にハッとする。竜の力を使えない寛也はここから落ちたら普通に大怪我をするだけだった。打ち所が悪いと、即死である。

 寛也は窓から出ることを思い止どまって、今度は出口のドアへ向かおうとして、また潤也に止められた。

「ヒロの適う相手じゃない」

 言って潤也は窓の外でうごめく影に目をやった。逃げ惑う生徒達がそこにいた。

「だけど…」
「ダメだよ」

 それでも何とかしたいと寛也は思った。潤也はその寛也をピシャリと制する。

「あれは罠だよ。襲うべき標的がはっきりしているのに、それ以外を襲っているんだ。僕達をおびき出す為の青雀の罠だよ」

 寛也は潤也の言葉に目を見張る。

 今までの連中は杳だけを襲っていたのだ。それは潤也の言う通り、襲うべき相手が分かっていたからなのだ。それなのに、今になって無差別に襲撃していると言うことは、十中八九、潤也の言が当たっているだろう。

「見てごらん。翔くんも傍観者だ」

 潤也はそう言って、校舎の影に隠れている翔を指さす。小さく気を押さえ込み、見つからないようにしているのが分かった。

「なら、このまま放っとけって言うのかよ?」

 翔の態度と潤也の言葉に、寛也は怒りが沸き上がる。

「罠だって言うなら、あれは俺達の所為だろ?」
「ヒロ、声が大きい」

 潤也が小声で叱責するのを、寛也は舌打ちだけ返して駆け出した。

「ヒロッ」

 止める潤也の声は聞きすてた。


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