第5章
性徴
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何かと思えば、そういうことかと寛也は納得する。先程の男子生徒達はそれを目当てに急いで走っていたのだった。
「興味、なさそうだね?」
「お前、あるのか?」
「一応、僕も男だからね」
「くだらねぇ」
呟いて寛也は反対方向へ歩きだそうとする。潤也はその腕を掴んで引き留めた。そして、小声で耳打ちする。
「杳、出るよ」
途端、寛也は振り向いた。
「はいぃ?」
その形相に、潤也でなくとも吹き出しただろう。信じられない物でも見るような目と、同時に、明かに色めき立っていた。その寛也の頭を軽くはたいてやる。
「食いつきすぎ」
「いや…だって…杳、男だぞ」
動揺の色を隠せない寛也に、潤也は涼しい顔で言う。
「いいんじゃないの? 出場条件に女子限定とはなってなかったし」
「って言っても…」
「杳、美人だからね。男子の制服を着てても目立つのに、着飾ったらさぞかし奇麗だろうね」
言いながら、潤也は伺うような目で寛也を見やる。反応を見て楽しんでいるのではないだろうか。寛也はそれにようやくそれに気づいて、もう一度潤也に背を向けた。
「行かねぇ。女の格好したアイツなんて見たくもねぇ」
「あ、そう?」
潤也が意外とあっさり引き下がるのに、寛也は内心拍子抜けする。できたら潤也に無理矢理引っ張って行かれると言う構図を作りたかったのだが。
「じゃあいいよ。他を当たるから。断っておくけど、こっそり見に行こうとしても無駄だからね。もう入場規制がかかってて、整理券を持ってないと入れないから。あーあ、一枚余っちゃったけど、どーしよーかなぁ。翔くんでも誘おうかなー」
「待てっ」
わざとらしい潤也の物言いに、寛也は簡単に引っ掛かった。整理券をヒラヒラさせる潤也の腕を捕まえる。
「ガ、ガキには刺激が強いだろうから、仕方ねぇから俺が行ってやるよ」
寛也のこの言葉に、潤也は所構わず爆笑した。
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