第5章
性徴
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「あー、終わった終わった」

 寛也はフリルのエプロンを脱いで、大きく伸びをした。

 寛也のノルマは今日の午前中だけである。午後1時まで働いてクラスが用意した弁当を食べると、後は自由行動だった。誰とも約束はなかったので一人で回ることになるのだが、それも味気無い。

 潤也達に合流しようか、あいつらはどこにいるのだろうかと思いながら廊下に出ると、何やら騒がしかった。

「…始まったらしいぞ」
「可愛い子、盛りだくさんだって」
「行こう、行こう」

 寛也の脇を駆け抜けて行った男子生徒達。

「何だ?」

 何か面白いものでもやっているのだろうかと振り返って見送る寛也の背を、ポンと叩く手があった。

「終わったの?」

 自分と同じ声質に振り返ると、潤也が一人で立っていた。

「ああ」

 杳は一緒ではないのかと聞こうとする寛也の表情を、潤也は先に読み取る。

「杳とはしばらく別行動だよ。個人的に用事があるみたいだから」
「ふーん」

 それなら一緒にいられないと残念に思う寛也に、潤也は意味深な笑みを浮かべてみせる。

「それはそうと、ヒロはこれからどうするの?」
「どうって…別に予定はねぇけど」
「じゃ、体育館へ行ってみない? 面白いもの、やってるから」

 潤也の笑いの意味が掴めず、寛也は首を傾げる。

「面白いものって?」
「ミスコン。各ブロックの選(よ)りすぐりの美人が出るって話だよ」
「ふーん」


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