第4章
告白
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 言われて寛也は自分の身体を見回す。が、普段と何も変わったようには見えなかった。手のひらを開いてみると、そこには竜玉が変わりなく存在した。

「ヒロ達が見ている気の力と、オレの言うオーラって、多分違うんじゃないのかな。ヒロ達は竜の気の力を意識的に放出しているんだろうけど、オレの見てるのは眠っている時にも見えるんだ。普通の人のものも見えるよ」

 言って、杳は自分の手を見つめる。そこにも何か見えるのだろうか。

「そのオーラが弱くなるってどういうことか良く分からなかったんだけど、病気かなって…」

 杳は寛也を見上げてくる。

「ゴメン。オレが気づいてあげれば良かったのに」
「何言って…お前の所為じゃねぇだろ。元はと言えば俺が不摂生してたのが原因なんだし、付け焼き刃の練習で出場したりなんかしたから…」

 毎日部活に励んでいる部員を差し置いて、普段はめったに顔を出さない自分が大会の代表になる資格なんて、本当はなかったのかも知れない。

 成績が良いだけでは、決して十分ではないのだ。

「ありがとう、杳。心配してくれるお前の気持ちが一番嬉しい」

 そう言うと、杳は驚いたように目を見開いて、慌てて顔を逸らす。頬が少しだけ朱に染まっていくのが分かった。

 可愛いと本気で思ってしまった。が、手を出すことはもうできないのだ。

「だけど、本当にゴメンな。1位取れなくて」
「いいじゃん」

 しおらしく言う寛也に杳が明るく返して、もう一度見つめてくる。

「そんなものなくったって、オレの一等賞はいつもヒロなんだから」

 言って、ふわりと笑う。

 これで手を出さない奴がいたら嘘だと思うくらいに可愛かった。寛也は抱き締めたくなって、それでも踏みとどまった。本能のままに行動して成功した試しがなかった。特に杳に対しては。

 熱があるくらいの方が、自分は冷静なのかも知れない。そんなことをふと思っていると、杳の方から近づいてきた。

「ね。一等賞の賞品、あげようか?」
「え…」

 聞き返す間もなかった。杳の顔が近づいてきたと思ったら、ほんの一瞬、唇が触れた。

 それは本当に一瞬だけで、まるで幻のようにしか思えなかった。


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