第4章
告白
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 とんだ茶番だった。

 せっかく杳に良いところを見せれるチャンスだったのに。記録を出して優勝すれば、晴れて杳と恋人になれたのに。それなのに、競技の途中でぶっ倒れるなんて、恥ずかしくて合わす顔がない。

 自己管理もできていない証拠だとは監督に言われたが、全くその通りだ。

 しかし、昨日の朝は本当に何ともなかったのだ。

 熱でだるい身体よりも、失恋の痛みの方が寛也にはこたえた。

「あーもうっ。杳に何て言やぁいいんだ…」

 呟いた独り言に、布団の上から答えがあった。

「取り敢えず、平謝りしてみれば?」

 その声にギョッとして寛也は跳び起きた。そこに、制服姿のままの杳が腕組みをして立っていた。学校帰りなのだろうか。

「杳…」
「そうしたら、少しは許すかも」

 わずかに怒ったような表情を浮かべて、寛也を見下ろしてくる。期待してくれていたのだろう、きっと。それを寛也は裏切ったのだ。そっぽを向かれて当然なのだ。

「悪かった。優勝できなくて」

 顔を上げられなくて、頭を下げた。杳が、その頭を上から鷲掴みしてくる。

「いいよね、この角度。めったにないし」

 さっきまで不機嫌そうだったのに、いきなり弾んだ声がした。

「いっつも偉そうな口ばかりたたいてるから罰が当たったんだよ。少しは反省して、部活もちゃんと参加しないとね」

 ごもっともですと呟く寛也に、杳はようやく手を離してくれた。しかし寛也は顔を上げられなかった。合わせる顔がないのは変わらないのだ。

 と、うつむく寛也をその下から、ヒョイッと覗き込んでくる顔があった。

「うわあああっ」

 いきなり目の前に現れた杳の顔に、寛也は思わず飛びのいた。

 ベッドの上を後ずさって見返した杳は、驚く寛也にくすくすと笑いを漏らす。

「良かった。思ったより元気で」
「杳…」

 そのまま杳はベッドの端に腰を降ろした。

「ヒロが病気するなんて思わなかったから。もっと早くに言ってあげれば良かった」

 何のことかと首を傾げると、杳の意外な言葉が返ってきた。

「ヒロの竜のオーラ、小さくなってるんだ」
「!?」


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