第4章
告白
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 してやられたと、寛也は舌打ちする。

 潤也の後ろ姿を随分長い間、見送って、見えなくなってからうつむく杳の姿が横目に見えた。

 何を話せば良いかも分からないし、今は杳と話をしたくなかった。口を開けば先程見たことを問い詰めてしまいそうで、嫌だった。

 思わずため息をついてしまう。その寛也に、チラリと視線を向けてくる杳に気づくが、敢えて顔を背けてしまった。その寛也に、ポツリと意外なことを言ってくる杳。

「ヒロ、具合、悪い?」
「え?」

 思ってもみなかったことを言われて、思わず振り向いてしまった。そこに、杳の心配そうな顔があった。

「いつもより元気なさそう」

 それは誰の所為だと喉まで出かかって、思い止どまる。杳に怒鳴りたくはなかった。大声を出せばきっとまた脅えられそうで怖かった。それに、心配してくれているのは分かるので。

「どーってことねぇよ。1位になれなくて凹んでるだけだ」

 言って、杳から視線を逸らす。

「そう…なの…?」
「それよりお前、俺が2位以下なら即行帰るって言ってたじゃねぇか」

 言外に、早く帰って欲しいと含ませるが、杳には通じないようだった。

「オレ、ヒロを見に来たんじゃないから」
「ああ?」

 また振り向いてしまった。目が合うと、今度は杳がわざとらしくそっぽを向いた。

「潤也からデートに誘われたから来ただけ。スポーツ観戦してるだけだから」

 どう取って良いものやら分からない言葉に、つい、思っていたことが口をついて出てしまった。

「お前…ジュンと付き合ってるのか?」
「はぁあ?」

 びっくりした表情で振り返る杳。

「だって、デートだって…」
「ばっかじゃないの」

 本気で馬鹿にした口ぶりではあるが、何故か腹が立たなかった。それよりも、ひどく懐かしいような気がしたのだ。

「ヒロとも付き合ってないのに、何で潤也と付き合うわけ?」

 杳の言葉の意味が分からず眉を寄せて見せる寛也。杳は不機嫌そうな表情を浮かべる。

「ホント、馬鹿なんだから」
「もうっ、馬鹿馬鹿言うな。お前の言ってる方がよっぽど理解不能じゃねぇか」

 ちょっとムッときて反論しただけで、睨まれた。どうやら自覚がないらしい。

「もういいよ、ヒロなんか。言っても分かってくれないし」

 すぐにプイッとそっぽを向く。そして、膝に乗せていた重箱を潤也の座っていた椅子に置いたものの上に重ねる。

「オレも飲み物、買ってくる」

 言うが早いか、立ち上がって潤也の向かった方向へ行こうとする。その腕を捕まえたのは無意識だった。


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