第4章
告白
-3-
7/12
手元からポトリと落ちたペットボトル。その中の水が足元で水たまりを作っていった。ぼんやりそれを見ていると、背を叩かれた。
「何やってんだ、結崎」
寛也は取り落とした手を見つめ、眉を寄せた。
「何でも、ないです」
言って、半分以上中身がこぼれてしまったペットボトルを拾い上げた。飲み口に土がついていて、これはもう飲めないと思った。
「ドンマイ、ドンマイ。次、400頑張れよ」
寛也の元気がないことに気づいて、声をかけていく同級生達。
100m走は散々だった。
スタートで少し足がもつれたのが切っ掛けだった。スタートダッシュに出遅れて、その後も挽回できなかった。
自分でも理由が分からなかった。全力で走ったつもりだったのに、結果は10人中8位。今までにない悪成績だった。当然、予選落ちである。まさか気持ちがこうも走りに影響するものとは思われず、寛也自身、訳が分からなかった。
「すみません。俺、早めにメシ食ってきます」
自校のメンバーが陣取っているのは観客席の一角、3年生が大半を占める集団にそう声をかける。
「午後の400は頼むぞ」
言われて苦笑するしかなかった。
取り敢えず、食べさえすれば元気も出るし、何とかなるのではないかと思った。が、その弁当は潤也の手元だと言うことで、また気が重くなる。
どこかで弁当を調達しようか。余りあそこへは行きたくなかった。
財布の中身はどれくらいだったろうか。そっと覗き込んで、ため息をついた。
「…仕方ない…」
背に腹は変えられないのだと、自分に言い聞かせた。
* * *