第4章
告白
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 手元からポトリと落ちたペットボトル。その中の水が足元で水たまりを作っていった。ぼんやりそれを見ていると、背を叩かれた。

「何やってんだ、結崎」

 寛也は取り落とした手を見つめ、眉を寄せた。

「何でも、ないです」

 言って、半分以上中身がこぼれてしまったペットボトルを拾い上げた。飲み口に土がついていて、これはもう飲めないと思った。

「ドンマイ、ドンマイ。次、400頑張れよ」

 寛也の元気がないことに気づいて、声をかけていく同級生達。

 100m走は散々だった。

 スタートで少し足がもつれたのが切っ掛けだった。スタートダッシュに出遅れて、その後も挽回できなかった。

 自分でも理由が分からなかった。全力で走ったつもりだったのに、結果は10人中8位。今までにない悪成績だった。当然、予選落ちである。まさか気持ちがこうも走りに影響するものとは思われず、寛也自身、訳が分からなかった。

「すみません。俺、早めにメシ食ってきます」

 自校のメンバーが陣取っているのは観客席の一角、3年生が大半を占める集団にそう声をかける。

「午後の400は頼むぞ」

 言われて苦笑するしかなかった。

 取り敢えず、食べさえすれば元気も出るし、何とかなるのではないかと思った。が、その弁当は潤也の手元だと言うことで、また気が重くなる。

 どこかで弁当を調達しようか。余りあそこへは行きたくなかった。

 財布の中身はどれくらいだったろうか。そっと覗き込んで、ため息をついた。

「…仕方ない…」

 背に腹は変えられないのだと、自分に言い聞かせた。


   * * *



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