第4章
告白
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 突然、背中をつつかれて、寛也は我に返った。競技がもう始まっていた。

「あれ、杳ちゃんと一緒にいるの、お前の弟じゃないのか?」

 寛也が今まで見ていた方向を見やってそう言う先輩は、それを目にしていた寛也の心情などお構い無しだ。

 寛也には、外野席のほとんど人のいない所に、ぽつんと二人だけ座っているのがずっと前から目についていた。

「何だ結崎、フラれたって、弟に負けてたのか」
「関係ないです」

 取り敢えず敬語を使うが、語調は厳しかった。

 寛也は、遠目でも杳の姿を見分けることができた。元々視力は良かったのだが、あそこまで遠くて見分けられるのが、自分でも不思議だった。潤也に関しては、竜としての気配を感じるうえに、視覚でも身の内から発せられる竜気で見分けられる。が、杳にそれがある訳でもないのに。

 以前から感じていた。何となく杳の気配が分かるのだ。佐渡に連れ込まれたホテルのその部屋を見つけられたように、杳がそこにいることが分かるのだった。

「バカだな…俺は…」

 それ程までに思っているのに受け容れられなくて、それでも尚、思い続けて。たった今、見てしまった潤也とのキスシーンに、そうだったのかと思う一方で、有り得ないだろうとも思う。

「おい、次だぞ」

 寛也は後ろの先輩につつかれて、慌ててスタートラインについた。そして、もやもやした気持ちのまま、スタートを切った。


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