第4章
告白
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 陸上競技場は県都市内の中心部にある。都市部の、緑の木立に囲まれた総合運動公園の中にあった。

 潤也と杳が行った時には既に観客が集まっていて、席もかなり埋まっていた。

「ゆっくりできるところがいいよね」

 前の方は人が多いので、潤也は少し離れた周囲に人のいない席を選んだ。杳は黙ってついてきていた。

 まだ競技は始まっていないようで、グラウンドではその準備が進められていた。

「ヒロは100mと400mの二種目だって」

 多分知っているだろうとは思いながらも教える。杳は興味無さそうな顔のままでうなずいて、膝に肘をつく。

「各種目ごとにまず予選が行われて、その後に決勝戦だから、どっちも出るんだったらヒロ、ハードだよね」

 プログラム的にこれで出場できるものか、疑問だった。体力的にもどうなんだろうか。

「普通、二種目に出たりしないんじゃない?」

 潤也の疑問を杳は軽く言い放つ。その通りである。

「ヒロはそれだけ期待されているってことじゃないかな」
「ふーん」

 そっけなく言って逸らされた目は、しかしグラウンドの方へ向けられていた。寛也を捜しているのだろうことは一目瞭然だった。もしかしたら余り心配することもないのかも知れないと潤也は思った。

「そう言えば杳、文化祭は何か役割ある?」

 もうすぐ行われる最大行事に話題を変えた。

「部活してないんだったら、クラスの出し物くらいだよね? K組は何かするの?」
「別に何も…」

 文化祭の2日間、第1線校舎の1年の教室を使って自由参加の出し物を出せる。申請すれば、部単位でも、クラス単位でも、ブロック単位でもスペースを貸し出ししてもらえる。1教室の半分を暗幕で区切って使うのだが、それぞれケーキ屋や喫茶店、お化け屋敷なんてものもあったように思う。スライド上映とか、文芸部などは部活動の発表の場としていて、毎年会誌の販売もしていた。

 それらに参加せず、劇にも出ないとなると、2日間まるまる自由の身の上となるのだった。

「良かったら、僕と一緒に回らない? 他に約束があったり、一緒にいたい人がいないんだったらの話だけど」


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