第4章
告白
-2-
8/9
「ヒロ、杳のことが大切なら、もっと注意した方がいいよ」
「俺の所為か?」
潤也に言われなくてもそう思った。自分が一緒にいたなら起こらなかった事件である。
「誰の所為かって言ったら、襲った連中の所為なんだけど、ヒロと喧嘩別れしたって言う噂も、原因の一端じゃないかな」
「じゃ、俺にどうしろって…」
握りこぶしをテーブルの上で握る寛也に、潤也はため息をつく。
「どうすればいいか分からないようなら、僕が後を引き受ける。少なくともヒロよりは上手く立ち回れると思うからね」
そう言う弟を睨み上げるが、言い返さずに、すぐにうつむいた。
「勝手にしろ。俺にはもう…関係ねぇから」
呟くように言って、顔を逸らした。その先に人影が見えて、寛也は固まった。
寛也の様子に、潤也もその視線の先を見やる。
「杳…」
潤也の部屋で休んでいた杳がそこに立っていた。一体どこから聞いていたものか。
「潤也、ごめん。迷惑かけて」
言って、ゆっくり歩いてくる杳の白い顔は、いつもよの色が薄くて、明かにまだ具合が悪そうだった。
「大丈夫? まだ寝てていいよ」
潤也が杳に椅子を勧めて、座らせる。杳は寛也と目を合わせることなく、潤也を見上げる。
「もう帰る」
「帰るって…バイク、乗れないだろ?」
多分、運転はできないだろう。
「家には僕から連絡してあげる。だから、休んでなよ」
寛也は二人のやり取りに苛々する気持ちが膨らむ。それは、嫉妬心だと気づいた。それと同時に、自分が何もできなかったことに対する自己嫌悪だった。
その気持ちに我慢できなくて、口を挟む。
「…大将を呼んでやればいいだろ。あいつに連れて帰ってもらえよ」
それが一番安全だと思った。
が、その言葉に、潤也が睨んでくる。そんなことは百も承知で、翔に声をかけなかったのだ。
「ちょっとヒロ」
潤也に襟首をつまみ上げられた。