第4章
告白
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「ボケッとしてるなら、少しは手伝えよ」

 そう言ってよこす委員長――佐渡亮の顔を、杳はジロリと睨んだ。

 放課後の教室ではデコ製作が行われていた。模造紙を貼り合わせて作る巨大な看板である。佐渡は、その上を靴を脱いで絵を描いていた。

 クラス全体から2チーム分をより分けて、残った組である。杳は役割に挙手しなかったので、教室で暇を潰していただけだったのだが、それが目に障ったらしい。

「オレ、美術選択してないから、絵心ない」

 言って、プイッとそっぽを向く。

「お前なぁ」

 協調性のないのは今に始まったことではないのだが、この時期になってそれを表面化させるものなのか。佐渡は呆れながらも、立場上、放ってはおけず、腰を上げた。

「学校祭は全員参加が原則だ。知ってるだろ?」
「…うるさいな」
「杳っ」
「名前で呼ぶなって言ってるだろ。いい加減、覚えろよ」

 近づいたらバチバチ音がしそうな程、周囲に高電圧バリアを張り巡らせているように見えた。クラスメイト達も遠巻きに見ているだけだった。それを目の端に止めて、佐渡はため息をつく。

「分かった。みんなと一緒にやりたくねえってんなら、それでいい。その代わり、お前には別に役を回してやるよ」

 佐渡の言葉に、杳は知らん顔をしたままだった。

「お前にピッタリの役だ。ブロック優勝に一役買ってもらうからな」

 何のことか、杳はチラリと佐渡を見やる。

「安心しろよ。段取りは全部俺がしてやる。その代わり、学校祭1日目の昼12時に体育館の舞台袖、向かって右側に来い」
「……は?」

 杳は訳が分からず佐渡を見上げる。佐渡は意味深な笑みを浮かべながら、近づいてきた。

「お前の役目だ。その代わり、学校祭の準備も、全部免除してやる」
「そんなもの、初めからする気ないから」

 言って杳が立ち上がろうとするのを、その肩を押さえ付けて椅子に座らせる。

「逃げるなよ」

 言われて杳はムッとした表情を向ける。

「全校あげての学校祭だぜ。お前一人が何もしねぇなんて許される訳ねぇだろ。お前に回してやるのは、女子でもできるような簡単なヤツだ。大した知恵も力もいらねぇ。そんなもんもできねぇなんて、言わねぇよな?」

 ここまで言われて、承諾しない訳にもいかなかった。

「うっさいな…やりゃいいんだろ」

 思いっきり不機嫌な口調で返して、佐渡の手を払いのける。と、佐渡はニヤリと笑んだ。

「よし、約束だ。当日になって逃げ出すなよ」
「誰がっ」

 吐き捨てるように言う杳に佐渡は、ニヤリと笑みを浮かべてから、クラスメイトを振り返る。

「聞いての通りだ。うちのブロック代表、杳で決まりだ」

 佐渡の言葉に、教室内が沸き立つ。かなり盛り上がってしまう連中に、杳は眉を寄せた。

「代表…?」

 何か、嫌な予感がしたが、今更引き下がる訳にもいかず、立ち上がる。そして、黙って帰り支度を始めた。


   * * *



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