第4章
告白
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どう言う意味か、一瞬、分からなかった。
思い込みでも何でもなく、杳が自分を思ってくれていることは感じていたし、それが仲間とか友達の域を出ていることも分かっていた。それなのに、拒否されるなどまるっきり考えてもいなかった。
何故と言う思いだけが、膨れ上がる。
「ごめん、ヒロ…ごめん」
「何でだ? 俺のこと、嫌いか?」
杳は顔を伏せて、首を振る。
「だったら…」
「ごめん。ヒロの気持ちに応えられない…」
くぐもった声がする。
「どうして…? 他に好きな奴がいるのか?」
杳はその問いにも首を振る。
その時、その身がわずかに震えているのに、寛也はようやく気づいた。
「……俺が、怖いか?」
恐る恐る聞いた言葉に、反応がなかった。
なんて高い壁。
とっくに越えていると思っていた。
何故杳が他人を怖がるのか分からない。普段は一見して愛想が悪いだけのように振る舞っているが、その実は、相手との一定以上の距離を保っているのだと知っていた。自分はその杳を、いつも側にいて守ってきた。それを杳も受け入れてくれていた。だから、自分だけは他の誰とも違うのだと思っていた。
それなのに、こんなにも近くにいた自分に本当は脅えていたなんて、信じられなかった。
大切にしたいと思っていた。自分が守るべき人は杳なのだと、ずっと思っていた。それなのに――。
ここまでなのだと、知った。これ以上は進めないのだと思った。杳の中へ本当に立ち入ることは、できないのだと。
「…ごめんな。俺の気持ち、押し付けるつもり、ねぇから…」
言って、肩に置いたままの手を放した。はっとしたように顔を上げる杳。その瞳は、ひどく頼りなさそうな色をしていた。それを包み込んでやれるのは自分だと思っていた。
だけど。
「今の話、忘れてくれ」
絞り出すように言って、寛也はその瞳から眼を逸らした。