第4章
告白
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「じゃあ、1位を取るって言うなら、行ってもいいよ。2位以下なら、即行帰るから」
「ひでぇな…」
言いながらも、自信は十分にあった。杳がいれば。
側にいてくれれば。
「なあ…杳」
先を歩く杳に、寛也は立ち止まって声をかける。改まった口調に気づいてか、杳は怪訝そうに振り返った。
初秋の夕暮れに奇麗に映る顔が、寛也を見上げてくる。
寛也は小さく深呼吸して、告げる。
「俺と付き合ってくれないか?」
一大決心の寛也の言葉に、一瞬キョトンとして、杳は左腕の腕時計を見やった。
「これから? いいけど、どこ行くの?」
ずれた返答に寛也は力が抜けそうだった。それを何とか押し止どめて、杳の両肩に手を置く。
心臓が一気に脈打つ。
「好きなんだ、杳。俺と恋人として付き合って欲しい」
そう言った寛也の言葉に、大きく眼を見開く杳。寛也を見つめるその頬が次第に朱色に染まっていくのが、はっきりと見て取れた。よほど驚いたのか、うまく返答できないでいる杳。
「ヒロ…あの…」
「大切にする。だから、俺の側にいて欲しいんだ。ずっと」
寛也を見つめたままの杳に、そっと唇を近づけていく。
「愛してる…」
ささやく言葉に、ピクリと、肩が震えるのを感じた。
そのまま、唇を重ねようとした寸前、顔を背けられた。
「…杳?」
心なし潤んでくる瞳を伏せて、杳は小さく首を振った。