第4章
告白
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水飲み場で頭から水を被った。
シャワーは家へ帰ればあるが、取り敢えず水浴び気分で頭だけ冷やそうと思って、水の流れる蛇口の下に頭を突っ込んだ。
「今日はいつも以上に飛ばしてたな」
そう声がかけられると、後ろ首を掴まれて、蛇口の水の勢いを強められた。
「ちょ、ちょっと…センパイッ」
寛也は暴れて抵抗する。飛び散る水しぶきは周囲の者まで巻き込んで、水飲み場はあっと言う間に大騒ぎになった。
別に良いところを見せようとは、思ってない。それでも、つい力が入ってしまったのだ。力んで失敗することは多いが、今日はスタートも上手くいって、足運びも軽快だった。
そのうかれている気持ちの一方で、どこか落ち着いた自分を感じられた。
――杳。
心の中で名を呼ぶだけで、ひどく気持ちが落ち着く。それだけ深い思いを抱いているのだと、自分でも思う。
寛也はスポーツタオルを頭から被って、濡れた髪を拭く。そして、校庭の向こうでまだ寛也を待っている杳に目を向ける。
「よし」
握りこぶしを胸の前でつかんだ。
* * *