第4章
告白
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「ありがとう。じゃあ、体育祭では手加減抜きでいくからね」
笑って言って、また校庭に眼を向けた。
今度はトラック一周、400メートルのようだった。ついさっき全力疾走した筈なのに、またすぐ次も走ろうとする寛也。どこまで元気なんだろうかと、少々呆れながら見守る中で、寛也は一気に駆け抜けた。
本当に小さい頃は、自分の分までも元気な寛也に嫉妬することもあった。一緒に生まれてきた双子なのにと、何度ねたましく思ったことか。
しかし、その分、寛也が活躍する姿を見るのも大好きだった。だから、誰にも負けないくらいに応援した。
そのことを良く分かっていてくれた寛也。応援する潤也と二人で勝ち取ったものだからと、小学校の大会で優勝した時の盾は潤也の部屋に飾られた。
ひどくなつかしく思うのは、もう味わうことのないものだからか。
竜としての記憶が鮮明になるにつれ、この思いもいつか色あせて消えていくだろう。
寛也を見守る人が自分の代わりに寛也の隣にいるから、自分の場所はもうないのだろうと言う思いとともに、自分の役目も終わるのかも知れないと、寂しくなる。
「杳、僕もう帰るけど、まだ見ていく?」
寛也の走る姿を見入っている杳にそう声をかけると、わずかだが向けられる柔らかな笑み。
「うん、もう少し」
「そう?」
彼氏の部活が終わるのを待つ女の子みたいだとは、口が裂けても言えなかった。その代わりに、潤也は別れの言葉を告げる。
元気小僧は、今日も大盛りだろうなと、米びつの中の米の量を思い出しながら、潤也は校門へ向かった。
* * *