第4章
告白
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 寛也は、走るには向かないだろうと思える長身だが、スタートを切った時には既に差がついていた。

 そして100メートルを走り切った時には、他とかなりの距離を開かせていた。

「え…すごい…」

 呆然として見ていた杳は、ゴールとともに無邪気に喜んだ。

「すごーい。ヒロ、カッコいい」

 その姿を、眼を細めながら見守る潤也は、何だか保護者みたいだと自分で突っ込んでしまった。

「ヒロが年中サボっても陸上部をクビにならないのは、あれがあるからなんだよ。去年の新人戦で、県大会、記録を作って優勝したからね」

 結構有名な話だと思っていたが、杳は知らないようだった。

「へぇ。人間、何かひとつくらいは取り柄があるもんなんだなぁ」
「生粋の人間じゃないけどね」

 潤也の言葉の意味に気づいた様子もなく、杳は聞く。

「潤也は? もう元気になったんだし、何かすればいいのに」
「僕はいいよ。僕の運動神経も、体力も、人間として生まれ育った結崎潤也本来のものじゃないんだし」
「それって…」
「人間で言うところの薬物使用って気がしてるし。何かズルしてる気がしてね」
「そんなことないよ。潤也の身体が丈夫になったのは覚醒したからかも知れないけど、運動能力は元々ヒロとは双子なんだし、ちゃんと備わってたんじゃないの?」

 そう、さらりと言って、笑顔を浮かべる。そんなに可愛い顔をされたら、せっかく諦めかけていたのに、ぶり返してしまいそうで潤也は困ってしまう。


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