第4章
告白
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「珍しいね、こんな所にいるなんて」

 練習の始まった陸上部。ストレッチをして、準備運動をして、それぞれの種目に分かれていく。それを遠目に見ている杳に、潤也は声をかけてみた。振り返る杳。

「潤也、今帰り?」

 学生鞄を持っている姿に、そう聞いてきたのだろう。校門は校庭の反対側ではあるが。

「君の姿が見えたから、何してるのかと思って」

 わざわざ回って来たとは言わない。

「部活見学? 今更、どこかへ入るつもり?」
「まさか。オレ、運動キライだし」

 そっけない杳の言葉に、君は嫌いなものが多いなと笑って見せてから、潤也は少し意地悪に言ってみる。

「じゃあ、陸上部のマネージャーなんてどう? ヒロと同じ部だし」

 そう言った潤也を、ジロリと睨んでくる。

「オレがマネージャーなんてするような人間だと思ってる?」
「自分で言うかな…」

 苦笑するしかない潤也だった。

 潤也は、高校に入学してからすぐに杳の存在を知った。その容姿から、かなり目立つ存在であるのに、これまで余り目立つことがなかったのは、杳自身、常にみんなに背を向けていたからだった。

 それが、最近なって知名度も人気度も急上昇していた。その原因が寛也にあるのだとは、当人達は一向に気づいていない様子だった。

 寛也と一緒にいることで、杳はとても柔らかい表情をするようになった。それと同時に、色々なものに眼を向けるようになった。

 それが多感な年頃の高校生に伝わらない訳もなかったのだ。

 ふと、校庭の向こうで整列する部員達の姿が見えた。

「ヒロが走るよ」

 潤也はそう言って、杳の視線を促した。


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