第4章
告白
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9月を待たずに完成した新しい校舎は、教員室や事務室等と1年の半数の教室を含む第一線校舎と、1年の残りと2、3年の教室を含む第二線校舎の二棟だった。
本当は年度末には建てられる予定だった特別教室の第4線校舎の建設費を流用したのだと、噂で聞いた。そのため思った以上に早く計画が進んだのだと言う。その代償に、第4線校舎の建設は来年度以降に持ち越されたらしい。
真新しい校舎は、まだ少しニスの匂いが残っているような気がした。
寛也の所属する2年A組は第二線校舎の西側1階にある。隣に1年2クラスを並べた横に、2A、2Bと続く。2階にCDEF、3階にGHKLの全10クラスだ。同じ校舎の東側は3年生全クラスと、特別室の2教室がある。つまり、寛也の教室の2階分真上に杳のクラスがあるのだ。それをぼんやり見上げていると、ポンと背を叩かれた。
「何か見えるの?」
振り返ると、杳が立っていた。
寛也の見ていた方向を同じように見上げてみる。が、そこに普段と何ら変わらないことを認めると、不満そうな顔をした。
「竜でも飛んでるのかと思った」
「有り得ねぇって」
苦笑が漏れた。
「せっかく完成したんだぞ。そうそう壊されてたまるかよ」
「あれ? 前の時はヒロが壊したって聞いたけど?」
その通りですと、寛也は頭を下げる。
初めて竜として覚醒した瞬間のことは良く覚えていない。休憩時間にふと見上げた空に見えた竜の姿に驚いた。
――目覚めろ。
その後、頭の中に響いたその言葉に、全身が熱くなった。その熱は次第に激しさを増し、炎に包まれたかのような熱を帯びたかと思ったら、次には、はるかに地上を見下ろす場所にいた。そこに、壊れた校舎が見えたのだった。