第4章
告白
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 笑いをかみ殺しながら聞く小早川に、寛也は憮然とする。

「ああ。手も握ってねぇし、ほとんど喋れねぇし」
「お前、下心有り過ぎで、罰が当たったんじゃねぇの?」
「ぬかせ」

 とは言え、杳は楽しそうだった。二人きりの旅行も良かったのだろうが、多人数でも結構面白かった。それに、修学旅行の代わりでもあったのだから、杳にとってはこの方が良かったのかも知れない。

 そう思うことで、何とか堪えたものだった。

「それはそうと。お前、今、杳のことなんて言った?」
「杳ちゃん?」

 脱力しそうだった。

「分かってると思うがな、小早川。杳は男なんだぞ。高2男子に『ちゃん』はねぇだろ?」

 と言うか、下手をしたら平手が飛んでくるかも知れない。そう思う寛也に平然とした顔で答える小早川。

「何言ってんだよ。あんだけ美人で可愛いんだから、そんな些細なこと、問題じゃねぇって」

 こいつはまた、何か良からぬことを企んだりはしていないだろうか。疑わしそうに見やると、ニヤリと笑い返してくる。

「気になるか? 他の奴にそんなふうに呼ばれるのって」
「な…?」
「いつまでも自分だけのものだと思ったら、大間違いなんだぜ。お前が杳ちゃんのこと、恋人じゃねぇって言うんなら、今すぐモーションかけようって奴はゴロゴロいる。俺も含めてな」

 この言葉に寛也は息を飲む。

 小早川の言う内容は疑わしいが、杳は男女を問わず、基本的にモテる。女子には圧倒的にアイドル的存在として注目されている。男子は、多分、大半が寛也と同じ眼で見ている。

 5月の怪我の後、何度も倒れて、儚げなイメージもついてしまったのだろう。本人は至って我がままで自分勝手なままなのに。

「ま、精々がんばれよ。早く手を打っておかないと、佐渡のように強引に迫る輩も出てくるぞ」

 言って小早川は意味深に笑った。


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