第4章
告白
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「聞いたぞ、結崎。お前、夏休みに杳ちゃんと婚前旅行に行ったんだってなぁ?」

 同級生の小早川のこの台詞に、寛也は早弁代わりに食べていたおにぎりを思いっきり喉に詰まらせた。

 夏休みも早々に終わり、急ピッチで進んでいた校舎建設も8月末の一学期末考査には間に合った。

 それが終わり、9月も半ばに入ると、校内は来月に行われる学校祭の準備でにぎわい始める。

 それを他人事のようにのんびり眺めて過ごしていた時期、突然言われた。

「大丈夫か?」

 米粒が気管に入って苦しむ寛也。この苦しみよりも、寛也にとっては実話の方が辛かった。

 ようやく収まった咳に呼吸を整えて、寛也は何とか答える。

「あれは杳が修学旅行に行けなかったから、連れて行ってやっただけだ。それに、何だよ、婚前旅行って」

 とんでもない誤解である。いや、本心は婚前旅行くらいの勢いで行くつもりだったのだが。

「えっ、違うのか? お前ら、てっきり交際中かと…」
「んな訳、ねぇだろ」

 本当は、今度こそ告白しようと思っていた。二人っきりになるチャンスはめったにないから、絶好の機会だったのだ。うまく行けば全部いただけてしまうかもと、かなりな甘い考えも持っていたのに。

「保護者とこぶ付きの旅行で、何ができるよ?」

 寛也は握った拳をわなわなと震わせる。

「おまけにあいつら、杳の周りで思いっきりガードを固めやがって、近づけもしねぇ」

 思い出すにも憎々しい、潤也と翔。

 内緒にしていたのに、どこから聞き付けてきたのか、乗った行きの新幹線の通路を挟んだ隣の席に、彼らは涼しい顔で座っていたのだった
。あの時の衝撃と言ったらなかった。

「ってことは、もしかしてチューも無し?」


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