第3章
魔手
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何かまずいことかと思う寛也。潤也は、少し引きつり気味に、またため息をつく。
「あのね、ヒロ。杳に自分の力を流し込…使わなかった?」
「え? ああ、それなら、手が冷たいから温めてやろうと思って。お前、言ってたじゃねぇか。術を使うにしても何にしても、手のひらが一番スタンダードだって」
潤也はくらくらと目眩を覚える。
「それは癒しの術を使う為にって教えたつもりなんだけど? いや、もう、ちゃんと教えなかった僕が悪いんだけど」
「な…何だよ?」
翔は睨んだままで、潤也は額に手を置いて。
「やってしまった後で教えるのも間抜けな話なんだけどね。ヒロも17なんだから、人間が交尾する方法って、知ってるよね?」
「交尾」と言う単語が、潤也が冷静になろうとしている努力の現れだった。
一応、小声で聞く潤也に、寛也は少し眉を寄せる。今更、何を聞くのかと。
「じゃあねぇ、竜が人とする時って、どうすると思う?」
「えっ、それは…精神体だから、自分の竜としての力そのものを………え?」
しんと静まり返る一同。寛也は弟の顔と翔の顔を交互に見比べる。
「ええ―――っ!?」
思わず椅子から転げ落ちた。
「それを、”生命の交感”と言うんだけどね」
冷静な声で潤也が教えてくれた。
「ちょ、ちょっと待てっ。俺、そんなつもりじゃ…」
「つもりがなくても、やっちゃったんですよね?」
濃い、非常に濃いオーラが、翔の身から立ちのぼるのがはっきりと見て取れた。