第3章
魔手
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「あと2ー3年は持つと思ったんですけど…」

 寛也と潤也の二人とも、そう呟くように言った翔を見やる。その二人に苦笑を浮かべて見せてから。

「綺羅と同じですよ。勾玉の力を使えば、引き換えに生命力が削り取られるんです。杳兄さん、今日、使ったでしょう?」

 先ほど保健室で襲われた時に、杳は自分の身体の中にある勾玉の力で相手を封じようとした。弱っている身体に、その行為が致命的だったと翔は言う。

「お前らの術で何とかならねぇのか? ほら、奈良の時も…」
「そんなもの、とっくにやってますよ」

 翔は少し苛ついた声で返す。が、ここが病院であることを思い出して、すぐに声を低くする。

「前に見せたでしょ? あの勾玉、僕達の力を拒絶するんです。今、杳兄さんの命をつなぎ止めているのは、人間の治療薬くらいなものです。もう、とても持ちきれないでしょうけど」

 そう、翔は静かに語る。冗談を言っているようにも見えなかったが、寛也にしてみれば突然そんなことを言われても信じられなかった。

「でも、何か他に方法があるだろ?」
「やり尽くしましたよ。この2カ月間、僕がどれだけ…」

 言いかけて、翔はうつむく。ぎゅっと、こぶしを握り締めて。その翔の肩をポンと叩く潤也。

「君も少し休んだ方がいいよ。杳のことは医者に任せて」

 多分、竜王の翔にこんな風に言える者は少ないだろうと寛也は思った。潤也の言葉に翔はわずかにうなずいてから、寛也を見やる。

「結崎さん、覚悟しておいてください。杳兄さん、あと何日も持ちませんから」

 ひどく挑戦的に睨んでいた。まるで寛也の所為だと言わんばかりだった。その翔の背を叩きながら。

「そんなこと言わなくていいよ。辛くなるのは君だって同じだろ」

 潤也は言いながら、翔を促す。気分転換でもさせようとエレベータの方へ向かいかけて、ちらりと寛也を振り返る。が、何も言わず、片手だけ挙げて見せてから、その場を去った。


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