第2章
使者
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バタンとドアを開ける音に振り返ると、杳が仁王立ちしていた。
「何だよ、これは」
明かに怒っている杳であるが、佐渡はその姿に緩む顔の筋肉をどうしようもなかった。
膝丈のバスローブを身に纏った杳は、どう見てもそこら辺の女よりも格段に色っぽく思えた。
「オレの服、どうしたんだよ?」
「逃げるつもりだっただろう? だから隠した。その格好じゃ、どこにも行けねぇだろうからな」
楽しそうに言って、佐渡は立ち上がる。怒っている杳ではあるが、一向に近づいて来ないのは警戒しているから。近づくだけ、後込みする杳が可愛く思えた。
逃げる杳の腕を掴んで引き寄せて、自分の腕に取り込んだ。
「俺に抱かれる覚悟はできたか?」
「できる訳ないだろ。嫌なものは嫌なんだから」
きっぱり言う杳は、先程までの震えもなかった。その杳を、ひょいっと抱き上げた。
「えっ、ちょっと…っ」
びっくりして暴れようとする前に、ベッドに運んだ。
柔らかなスプリングに沈むその身体の上に、すかさず佐渡が覆いかぶさる。何とかして佐渡の身体の下から逃げ出そうとする杳の肩を押さえ付けた。
「無駄だって言ってんだろ? それより、楽しんだ方が得だぜ。キモチ良く、させてやるから」
言って口付けようとして、プイッとそっぽを向かれる。佐渡は苦笑してから、杳の首筋に舌を落とした。
「やだ…」
身をよじろうとする杳の胸元から手を入れ、バスローブを開いていく。白い肌が湯気の為か、ほんのり赤く染まっていて、その上に朱を散らせていく。
はだけさせた胸にある突起に舌を這わせると、ピクンと杳の身体が撥ねた。
「あ…っ」
上がる声を、慌てて自分の手で塞ぐ。その杳の白い顔が上気していた。
「お前、感度いいよな?」
「うるさいっ」
返す声は、しかし涙声だった。もう一方の胸をツイッと吸い上げると、杳は佐渡の下で身じろぎする。
バスローブの紐を片手で解いて、佐渡の手は下へと降りていく。腰を撫でてから下半身へと手を伸ばしていこうとした。
その寸前。