第2章
使者
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 名を呼ばれた気がしたのは一瞬だけだった。それだけなのに、何故ここに杳がいると確信するのか自分でも分からなかった。

 竜として目覚めれば、仲間の気配は何となく分かるようになった。遠くの者は難しいが、近づけば、その存在は知ることができた。同じように敵となるような人ならざるモノの気配も悟れるようになっていた。翔くらいになれば、もっと詳しいのかも知れないが、自分にはその程度だった。

 それなのに、人間である筈の杳の気配など分かる訳もないのだ。実際、そんな気配は何も感じていないが、それでも、ここにいるような気がしてならなかった。

「これが当たってたら…愛としか考えられねぇよな」

 冗談のように呟いて、寛也は海の見える位置に最近建ったばかりの高級ホテルを見上げた。


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