第2章
使者
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「あいつ?」
「佐渡亮。僕、あの人に術をかける為に、放課後、校門の前で待ってて…それで…」
背後に何かの気配を感じて、そこから記憶が途切れていた。あの後ここへ連れて来られたのだろうか。身体のあちこちがギシギシ言うので、長い間、寝転がされていたのかも知れない。
「で、杳が呼び出されたってことか…」
寛也の表情が険しくなる。立ち上がる寛也に続いて、翔も起き上がろうとして、身体の力が入らなかった。
「おいおい…」
その場に崩れる翔を見下ろす。
「それくらい、大丈夫だよな? 先に行くぞ」
寛也はそう言って駆け出した。意識の回復した竜王に、何の手助けがいろうものかと。
* * *
冷たい大理石に頬が触れて、杳は意識を取り戻した。さっきから、余り時間は経っていないようだった。
杳はまだ震える身体を支えて、起き上がる。
とにかく考えなくては。動かなくては、逃げられるものも逃げられなくなる。怖くても。
杳はシャワールームの中で水を出して、中の音をかき消す。水音に気持ちも紛らわされたような気がして、ほっと息をついた。
のんびりシャワーを浴びている気分ではないが、身体に残る佐渡の感触を流したかった。