第2章
使者
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 ずっと、ずっと欲しかった。入学したての頃に出会って、一目ぼれした。それ以来、この夜の来るのを待ち続けていた。

 佐渡は杳の服を脱がせるのももどかしく、シャツの上から杳の胸をまさぐる。と、杳がいきなり、佐渡の肩を掴んで、突っぱねた。

「待って…ちょっとだけ、待って」

 自分を見上げてくる杳に、口付けて。

「どうした? 逃げられねぇぞ」
「分かってる。分かってるから…せめてシャワーくらい浴びさせろよ。体育館、暑かったし、今日一日汗かいてるのに…そのままなんて、やだ」

 ひどく可愛いことを言う。からかい半分に返してやる。

「俺が洗ってやろうか?」

 と、杳は思いっきり首を振った。

「い…いや…」

 小さい声で震えながら言うその言葉に、佐渡はうっかり口元が緩みそうになった。

「仕方ねぇな」

 言って、佐渡は身体をよけた。杳がホッと安堵の息を吐くのが分かった。

 嫌がられているのは知っているので気にもならない筈が、どこか辛く思えた。それなのに、出てくる言葉は威圧的だった。

「言っておくがな、逃げようと思っても無駄だからな」
「…分かってる」

 そう言って、杳はベッドから降りる。立ち上がろうとしてふらつくのを、とっさに支えた。が、その手は叩かれた。

「触るな…」

 呟くように言って、杳はバスルームに駆け込んだ。佐渡は駆けて行く杳よりも、手に伝わった衝撃に呆然とする。叩かれる寸前、触れた杳がひどく震えていた。

 そんなにも嫌なのか。脅える程に。

 佐渡は力無くベッドの上に腰掛けて、膝に肘をついて、頭を垂れた。

 手にいれたいとだけ願っていた自分。今目の前にそれがあるのに、ひどく空しく感じるのは何故なのだろうか。


   * * *



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