第2章
使者
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 身体に柔らかな衝撃を感じて、杳は目を覚ました。

「気づいたか?」

 その声の主を見やって、慌てて起き上がる。

 見慣れない部屋と、キングサイズのベッドに寝かされている自分。そして、目の前のは佐渡。

「何、ここ」

 しつらえた家具はすべて上等そうだった。

「ホテルのスイート。ラブホテルの方が良かったか?」

 言われて杳は自分の置かれている状況を把握する。思わず身を引く杳に、佐渡はくつくつ笑う。

「初めてじゃねぇんだろ? お前、男好きしそうだし」

 佐渡の言葉に。杳の白い顔に朱が刺す。佐渡は目を細めて杳に近づき、また身を引く杳の顔を覗き込む。

「まさか、誰も手付かずか?」

 杳が唇を噛み締めて横を向くのを、顎を掴んで自分の方へ向かせる。視線を合わせようとせず、目を背ける杳の腰に手を回し、ぐいっと引く。

「あ…」

 バランスを崩して、杳がベッドの上に倒れ込むのを、佐渡はその上から覆いかぶさる。自分の体重で杳の動きを封じて、その顔を間近にのぞき込む。

「俺が初めての男か? 嬉しいね。だったら、一生忘れられねぇ夜にしてやるよ」
「や…っ」

 逃げようとする杳の唇に、自分のそれを重ねる。貪るように、深く強く口付ける。

「杳…杳…」

 さらさらとした前髪をかき分けて、額に、頬に口付ける。わずかに涙のにじむ瞼に口付けて、もう一度、唇を重ねる。

 その隙に、杳のシャツのボタンを器用に外していった。

 ウエイトは自分の方がかなりある。逃げられる心配はなかった。

 佐渡は、唇をなぞって、顎から首筋へと舌をはわせる。

「やだ…」

 思わず上がる杳の声に、佐渡は胸の奥が疼くのを感じた。


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