第2章
使者
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呼び出されたのは寛也の家からそう遠くない港の倉庫だった。その中の、指定された番号の倉庫にたどり着いた。
大きくため息をついてから戸を開けようとして、背後からその手を掴まれた。はっとして見返すと、黒服にネクタイ、黒いサングラス。いかにもな風体の男に、杳は身をひるがえそうとして、別の人間にぶつかった。
振り返ると、同じ姿形の男が立っていた。
「大人しくしてもらおう。中でボスが待っている」
「!?」
杳は男の手を叩く。
「触るな。逃げないから」
言って、開かれた戸の中へ入る。
そこに待っていたのは電話の相手、佐渡だった。その手には翔の携帯が握られていた。
「早かったな。すっ飛んで来たのか?」
からかい口調の佐渡に、杳はムッとする。
「翔くんはどこだよ?」
問う杳に、佐渡はすぐ脇の、荷物の陰を顎で指し示す。そこに翔の姿があった。手足を縛られて、ぐったりしているのが見えた。
「翔くん…」
思わず駆け寄ろうとする杳を遮ったのは、佐渡だった。杳の腕を掴んで。
「おっと。そう簡単に返すわけにはいかねぇな」
そう言う佐渡を、杳は睨み上げる。
「あんた、こんなことして、ただで済むと思ってんの?」
「ただで済まないのは、お前の方だって分かってるか?」