第2章
使者
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 隣の部屋で遊んでいる奴に声をかけるだけのことが、面倒な訳ないではないか。声をかける間も惜しいくらい急いでいたか、声をかけたら嘘を見破られそうな相手だと思ったか。

「大将、どこに行くって言ってた?」
「佐渡くんの記憶処理だって言ってたけど」
「それだけにこんなに時間がかかる訳ねぇだろ。他に何か…」
「それだけだよ。結果を知らせるから、待ってろって」

 寛也と潤也は顔を見合わせる。

「まさかっ。翔くんに限って、めったなこと…」
「相手が人間だと、油断することもあるだろ。あいつ、チビだし。体力的には負けるだろ」
「有り得ないよ」

 潤也は信じられないとばかりに、否定する。

「それにあいつが杳を待たせたまま、今日は来ないってこと、有ると思うか?」

 その言葉に、さすがに潤也もいぶかしむ。

「何があっても、迎えには来るよね。散々待たせたし」
「後が怖いしな」

 冗談のように言う寛也は、手のひらを見つめていた。その手に、赤い玉があった。

「ヒロ?」
「杳を捜してみる。取り越し苦労なら、それで構わねぇからな」

 言って、赤い玉を頭上にかかげた。

「また変なことに首を突っ込んでなきゃ、いいけど」

 そう残して、寛也は天へと舞い上がった。


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