第2章
使者
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「少しお話しても良いですか?」
放課後、翔が校門の外でそう声をかけると、相手――佐渡は不審そうな目を向けてきた。
好印象はないようだった。
「お前、確か杳の弟とか言った…」
「正確には従弟ですが、一緒に育ちましたから兄弟みたいなものです」
別に言う必要はなかったが、どうせ記憶を操作しようと考えているので、口が軽くなっていた。
「んで、その従弟くんが俺に何の用かな?」
わざと子ども扱いするような言い方をする。が、翔はそんなことは気にもとめず、冷静な口調を続ける。
「杳兄さんのことで…と言う理由ではダメですか?」
「手を出すなって言う話なら、聞く気はない。あいつは絶対にモノにするからな」
だからお前には用はないと言わんばかりの口調で返してきた。
「ダメですよ。杳は誰にも渡しませんから」
翔の言葉に、佐渡はニヤリと笑う。
「本性、出したな。お前も俺と同じたろう。従弟って言うのなら、やったことくらいあるんだろ? アイツ、いい声で鳴きそうだよな?」
冷静だった翔は、その言葉に思わずカッとなる。一歩踏み出して殴ってやろうとする前に、突然、背後に気配を感じた。
振り返る寸前、身を何かが包み込んだ。
途端、五感の感覚が失われた。
何がいるのか、目にすることなく、翔は意識が薄れていった。
* * *