第2章
使者
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「……翔くん、そんなこと、こんな所で告知しないでくれる?」
潤也が顔を上げないままで言うのを、翔は苦笑して見やる。
「重荷過ぎましたか? ごめんなさい。でも、一番頼りにしているので」
潤也はまた、ため息が出る。そんなに頼られても困るのに。
「取り敢えず、全員集めてみる? せめて静川さんくらいは」
「いえ、まだ良いと思います。青雀くらいなら僕らだけで何とかなりますから。一応、ここに揃っているのがベスト3なので」
翔はそれでも他の人たちには、いつでも連絡が取れるようにはしておいて欲しいと付け加える。
一方、すっかり蚊帳の外となってしまった寛也は、二人の話を聞きながら、眠っている杳に目を向けていた。時々、ピクリと瞼が動いていたので、起きているとは気づいていた。また変なことに首を突っ込まなければ良いのだがと、思った途端、声をかけられた。
「だから結崎さん、喧嘩なんてやっている場合じゃないんですよ」
いきなりそこに話が飛ぶのか。
「校内に敵がいる以上、停学とかになってもらっては困るんです」
「そんなこと言ってもなぁ」
許せないものは許せないのだ。いくら当の本人の杳が止めたとしても、やめる気なんてなかった。
「僕が佐渡さんの記憶を操作します。杳兄さんのことも諦めるように仕向けますから、僕に任せて、余計なことはしないでください」
「余計なことって…何だよ、それ。俺に何もするなって言うのか?」
「ヒロ」
潤也が低く声をかけて、寛也の肩を押さえる。
「本当に杳を守りたいんなら、目先のことばかり見て浮足立たないってことだよ。封印を解かれていても、勾玉がある限り、父竜にとって、その存在は脅威だから、執拗(しつよう)に狙ってくる。下手をすると、杳、殺されるよ」
言われて、はっとする。そうだったのだ。先日も。
「…分かった」
本当は何が得策なのかは分からなかったが、それでも、自分の気持ちよりも守りたいと思うものの方が重要だと思うから。
そして、杳は最後まで眠ったフリをし続けていた。