第2章
使者
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「左鳳凰の配下の一匹、斬鬼(ザンキ)のようです」
「!?」
潤也が眉をしかめるのを、寛也は首を傾げる。
「何だ、それ」
寛也の言葉に、翔は困ったように潤也を見る。説明してくれと言わんばかりに。
「何…だよ? 俺、あんまり良く覚えてねぇし」
馬鹿にされたように見られて、寛也は居心地が悪かった。その寛也に潤也は苦笑混じりに言う。
「ヒロは覚えてないんじゃなくて、知らないだけなんだよ。あの頃はまだ雛だったし」
どちらにしても、ムッとした。
「父竜は母女と袂(たもと)を別った時、反旗をひるがえした僕達を抹殺する為にね、自分の左右の足を砕いて、二体の翼を持つものを作ったんだ。それが左鳳凰と右鳳凰。別名、青雀と朱雀。彼らにはそれぞれ六体ずつ配下がいた。それを総じて十二獣神と呼んだんだ。その中の一体だよ」
「ほーおうねぇ」
「僕達が初期に戦っていた相手は、主に彼らであって、父竜とまみえることは殆どなかったからね。ヒロは…戦は空が飛べるようになるまで、すぐ上の詩弦(しづる)や、綺羅と一緒に保護していたから、馴染みがないんだよ」
詩弦は歌竜のことだと、付け加えて。
それはつまり、自分は子ども扱いと言うことかと、寛也は面白くなかった。むくれる寛也に目もくれず、翔は続けた。
「話が逸れましたけど、もうひとつ気になったことがあります。僕が調査しようとした時には、斬鬼のわずかな残り香だけで、気配が消されていました。何者かの手によって」
「それって…」
「いますね、ボスが。多分、この学校に」
翔の言葉に、潤也は大きくため息をついて額を押さえる。
「杳兄さんを襲ったのは、十中八九この勾玉を狙ってだと思います。とすると、左鳳凰・青雀の目的は、父竜の封印を解くこと。現世にいますよ」
父竜が。