第2章
使者
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教室を出たところで、待ち構えていた潤也と杳、それから翔に出くわした。
「…何だよ、雁首そろえて」
嫌そうに言う寛也に、翔が近づく。
「聞きましたよ、今朝のこと。それも含めて、ちょっとお話があります。お宅へお邪魔してもいいですか?」
そう言う翔から、寛也は弟に視線を移す。承諾している様子だった。
「人に聞かれたくないってことか」
「ここではちょっと。杳兄さんにも付き合ってもらうからね」
翔はちらりと杳を振り返り、うんうんとうなずいている杳に苦笑する。
それを見て、寛也は、関係もないのに首を突っ込むなと言って作戦会議から追い出したことがあるのを思い出した。あの時はひどく不機嫌だった。もう随分昔のような、懐かしい気がした。
「じゃあ、僕達は自転車を回してきますから、先に帰っていてください」
翔はそう言って杳を促す。杳はバイク通学なので、置き場所は同じだった。
「うん。じゃあ後でね」
潤也が人当たりの良い笑顔で見送った。ちょっと薄ら寒いものを感じる寛也だった。
その表情に目ざとく気づく潤也。
「何か言いたそうだね?」
「いや、別に。それより大将、いきなり何の話だ?」
潤也からカバンを受け取って、並んで歩きだした。
「さあ。派手なことしたから、文句のひとつでもあるんじゃないの?」
「ならここで言えよ」
「もしかしたら、また阿蘇まで飛ばされるかもよ」
思わず立ち止まる寛也。過去にあった事実に、嫌な思いがよみがえる。
くすくす笑う潤也に、冗談だと気づく。
「お前、最近の冗談、怖いぞ」
そう呟いて、潤也を追いかけた。
* * *