第2章
使者
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「どういう関係だ、あいつら」

 クラス内でひそひそ話す連中にガンを飛ばして、佐渡は席に着く。

 杳のことは、実を言うと入学したての頃から知っていた。

 奇麗な外見は同じ制服を着た新入生の中であっても、ひどく目立っていた。そして、何かの拍子に合ってしまった瞳に、一瞬でひかれた。深く、どこまでも引き込まれそうなくらいに深い色をした瞳に、魂の奥底を揺すぶられた。

 以来、気になって仕方なかった。それまで付き合っていた女達ともすべて手を切ってしまったくらいに。

 だから今更、どれだけ嫌がられても杳を諦める気はなかった。他に好きな奴がいても、構わなかった。

 クラス替えして、声をかけるチャンスを伺っていたのは、本当は自分自身だった。

 ずっと観察していた筈なのに、これまで結崎兄弟の影は杳の側に全くなかった。

 それなのに、5月に長期休暇を取って出てきた途端、こちらが声をかける間もなく現れて、それまでずっとそこにいたかのように、当然のように杳の隣に場所を占めていた。彼らがそこに無理やり座っている訳ではなく、杳自身がそれを許しているのがはっきりと分かる。何より杳が人を名で呼んでいるのは、佐渡が知る限り他になかった。

 杳が学校を休んでいる間に何かあったのだろうか。一カ月もあれば――。

 いや、あの兄弟もある意味、目立つ。杳と同じように休んでいたふうには思えなかったようだが。あのどさくさの時であったから、断言はできないが。それにあの校舎が崩れた日、杳は学校へ来ていなかった。そこで接触があったとも思えない。

 では、いつ、どこで。

 佐渡は前方に見える兄弟に挟まれて座る杳の後ろ姿に、目を向ける。

 自分に殴りかかってきた兄と、杳を連れてその場から離れようとした弟と。どっちだろうか。まさか、二人いっぺんに――と、有らぬ想像までして、朝から余計に気分を害する。

 どちらにしても当分は杳にちょっかいも出せない。早いうちに決着をつけてやる。まずは場所と日時と兵隊と。

 思い知らせるくらい簡単だった。


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