第2章
使者
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取り敢えずK組の集団の席からは離れた場所に、杳を連れて席に着く。
素直についてきてくれたが、座った途端、寛也は足を蹴り飛ばされた。
「何すんだよっ」
向こう脛を思いっきり蹴られて、涙が出そうだった。
「騒ぎ、起こさないでよ」
言って、プイッと顔を背ける。
そんなことを言われても、相手がクラスで公然とやっているんだったら、それ以上のことをしておかないと効果がないだろう。そう、昨夜潤也にも言われたので、そのまま返そうとして、寛也は止める。
結局、みんなの前で杳を取り合うような言動になってしまったのだ。やっていることは、佐渡と大差ないのだと気づいて。
「悪かった」
ボソリと返した言葉に、杳は大きくため息をついてみせる。
「しょうがないんだから…」
その一言で許してくれたのだと分かる。
と、ホッとする寛也の頭を後ろからポンと叩く手があった。
「何しやがんだ?」
怒鳴って振り向いて、その相手が担任の鎌田だと知る。
「げっ」
「結崎寛也、言いたいことは分かるな?」
威圧的にそう言う鎌田に、寛也はピクリと顔が引きつる。口の中の血の匂いが、不快さを増す。
「な…何のことですか?」
救いを求めて、杳の向こう側に座る潤也を見るが、素知らぬ顔だった。当然、杳も知らん顔をする。
「放課後、教員室へ来い。分かったな?」
あれだけギャラリーがいれば、どれだけ逃げても無駄なのである。そのことに初めて気づいた寛也だった。
ガックリと力を落とす寛也。その膝を、杳がポンポンと軽く叩いて、すぐにまたそっぽを向いた。
「ま、いいか」