第2章
使者
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翌朝、体育館に入ると何やら館内の後方に人だかりができていた。
杳はその集団をちらりと横目で見やる。この前の中間考査の結果発表だろうと、興味がないとばかりに、今日の席を確保しようと歩きだす。
その背を、ポンと叩かれた。
振り向いて、朝から気分が悪くなった。
「杳、今日も美人だな」
どこからそんな言葉が出てくるものなのか。そう言った佐渡に、杳はそっぽを向く。
慌てて杳の腕を掴む佐渡。
「おおっと。あの人だかり、気にならねぇのか?」
「興味ないよ。どうせ、ろくでもないことだから」
そう返して、佐渡の腕を、乱暴に振り払う。
「残念だなぁ」
佐渡はわざとらしく肩を竦める。
「俺が身体だけじゃねぇってとこ、教えてやろうと思ってたのに」
「なに、それ。あんたの自慢話なんて聞きたくないよ」
「まあまあ、そう言わねぇで、来いよ」
杳の肩に手を回して連れて行こうとするのを、その腕からするりと逃れ出る。
「興味ないって言ってるのに。しつこいな」
「何やってんだ?」
と、突然背後で声がした。
その声に、杳は思わず逃げ出そうとする。が、その前に捕まえられた。
「俺の声に、顔も見ずにダッシュってのもなかろう」
「あ、別にそういうんじゃなくて…」
呆れ顔の寛也がそこに立っていた。
その横に、一緒に登校してきたのだろう、潤也もいた。
「おはよう、杳」
人当たりの良い笑顔を向ける潤也は、杳の背後にいる佐渡にちらりと目を向ける。