第2章
使者
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「バスケって…潤也、身体、大丈夫なの?」

 覚えてくれていたのかと、嬉しくなる。竜として覚醒する前まで、病弱だったことを。

 潤也は懐かしい思いを感じながら、心配はいらないと笑顔を浮かべた。

「大丈夫だよ。あれ以来、丈夫になったみたいだから」
「そ」

 小さく笑む。

「俺は? 俺の心配は?」

 真ん中に立っている自分を飛び越えての会話に、寛也が拗ねたように口を挟んできた。

「ものすごい健康優良児にしか見えないけど、どこか悪いの?」

 面倒そうに聞く杳に、寛也は胸を張る。

「おうよ。今、俺は恋の病に冒されてだな、日々胸が締め付けられる思いで…」
「脳の病の間違いじゃない? ノーテンキな、ばかヒロ」
「お前なぁ」

 誰の所為だと思ってるんだと、寛也は杳の頭をぐしゃりと掴んでやる。

 と、辺りでザワザワと声がした。慌てて手を放した。

「?」

 寛也の行動に、杳はキョシンとして見上げてきた。

「あー、まぁそういうことだから、応援よろしくな」
「潤也は応援に行くよ。ヒロは…まあ、気が向いたらね」

 言って、プイッと横を向く。やっぱり、根本的に機嫌が悪いようだった。

 それにしても潤也には愛想が良いのに、なぜ自分には不満そうにするのか、寛也には分からなかった。

「ま、いいか。どーせ優勝候補だし。ソフトが一番最後までやってるから、決勝戦の俺の勇姿は、必ず見ることになるからな」
「…良く言うよ。この前、ライト守ってたの見たよ」
「げっ」

 杳はそのまま向きを変えて、特別教室へ向かう。

 もうすぐ昼休みが終わる。校庭でも片付けを始めていた。

 寛也はその杳の後を慌てて追いかける。

「あれは、他のポジションもやっておかないとって。ホラ、決勝までだと4試合あるし、いくら俺でも4連投はやっぱ不可能だし」
「誰も言い訳なんか聞いてないんだけど?」
「う…」

 言われて、何を言い訳なんてしているのかと気づく寛也。

 格好よい所を見せたいと思っている自分を顧みて、本気で杳に惚れていることに改めて思う。

「じゃあさ、杳。俺、優勝するから、そしたら…」

 寛也の言葉に、杳が立ち止まった。

「そしたら、キ、キ、キ…」
「キ?」

 何が言いたいのかと首を傾げる杳に、寛也はキスして欲しいと言いたかったのに。

「キスの天麩羅でもご馳走してもらおうか」
「……なに、それ」

 意味が分からず、奇麗な眉を寄せて見せる杳。横で潤也が笑い出す。

「ヒロは和食党だから」

 潤也のそれも答えになっていなかった。

 ばかばかしいと、杳は二人を置いてそのまま教室へ向かった。


   * * *



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