第1章
予兆
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 楽しそうに話しながら校門へ向かう二人の後ろ姿を、翔は足を止めて見送った。

「どうしたの? 邪魔するんじゃないの?」

 突然声を掛けられて、振り返ると潤也が立っていた。

「別に。僕、自転車ですから」

 言って、くるりと方向転換する。自転車置き場は校門と反対側の、校舎の裏側だった。

「杳、元気になって良かったね」
「……見かけだけは」
「え?」

 翔の表情は杳がいる時とは打って変わって、暗かった。

「傷口は完全に塞がれています。でも、何故か痛みだけは残っているみたいなんです」

 そんなことがあるのかと不審顔の潤也に、翔は苦笑を浮かべる。

「夜中にね、痛くて眠れなかったりするらしいんです。眠ってもひどくうなされてるし。だから体力も回復しなくて…。ずっと休んでいたのは、その為なんです」
「そう」
「多分、杳兄さん、あの身体じゃそう長くは生きないと思います」
「!?」
「あと、もって2年か3年か…二十歳はこえられないんじゃないかな」

 思ってもいなかった内容に、潤也は愕然とする。

「僕達はまた、大切なものを失うんです。人の命は短いけれど、それよりもずっとずっと短い、儚い命…。また生まれ変わるとは限らなくて…それでも、何千年と待ち続けるしかないんです、僕達は」

「翔くん…」


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