第1章
予兆
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「先生、今日はお休みだから、好きに議題を決めて良いってことなので、来月の修学旅行のことも決めたいとは思いますが、それはまた次回と言うことにして。今日は念願だった葵の歓迎会をしたいと思いますが」
途端、杳の周囲で歓声と拍手が巻き起こる。
その雰囲気に、杳は回れ右をして教室から出て行こうとした。
「何で逃げるー?」
「まってー」
慌てて周囲にいた者達が杳の腕を掴んだ。その手を叩き落として。
「何の冗談?」
周囲を不審な色で伺う杳に、答えたのは委員長。
「冗談じゃないさ。言っただろ、みんな待ってたって。なのに、ずっと学校をサボりやがって」
そう偉そうに言う彼を、杳は睨みつける。
「俺、お前んちに何度か行ったんだぜ。1回目はお前んちの母さんに、夜中に家出したきり帰って来ないって言われて、次に行った時には弟だって奴に、会いたくないって言ってるから帰れって門前払だ」
「弟…?」
翔だと知れた。
「みんな、本気で心配してた。お前、知らねぇだろうけど、女子の中にはクラス替え、本気で楽しみにしていた奴、多いんだ。だのに家出だとか、会いたくねぇとか言われると、こっちに原因があるんじゃねぇかって思うじゃねぇか。だから、放課後のクラス会、何回もやったんだ。放っておけばいいなんてお前、言うけど、放っとけねぇんだよ。何の因果か、同じクラスになっちまったんだから。なっちまった以上は仲間だからな」
そう一気にまくし立てる彼が委員長である理由が、何となく分かった気がする。
が、杳は相変わらずな言葉しか出て来なくて。
「言ってること、クサイよ」
「あ? 何て言った?」
聞こえているくせに、わざと聞き返す。同じことを二度言いたくなくて、杳は簡単に折れた。
「分かった。悪かったよ。ゴメン」
投げやりにそう言ってやった。これでもう勘弁して欲しかった。
が、委員長が壇上から手招きをする。