第1章
予兆
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寛也は慌てて支える。その時にはもう、杳の手に光の玉はなくなっていた。
グシャリと、横で化け物の動く気配がした。
「そいつを渡してもらおうか」
あれくらいでくたばる相手ではなかったらしい。
寛也は杳を床に置いて、立ち上がった。
「冗談じゃねぇ。お前なんかに渡せるか」
手に、力が戻ってきた。背中の痛みも感じなくなっていた。
それと同時に、相手のひるむ姿が目に映る。身を竦め、慌てて地面に身を隠そうとしているのが読み取れた。
「させるかよ」
赤い炎が、手のひらに生まれた。間髪を容れず、寛也はその炎球を繰り出した。
そして、あっけないくらい簡単に、その化け物は炎に巻かれて消滅した。
* * *